【船酔いがひどくても船乗りになれますか?】元航海士が答えます!

船酔いがひどくても船乗りになれますか?

質問箱を始めて間もない頃。こんな質問をいただきました。

「時化が怖いです…ボットムさんは怖くないですか…」

よくある質問ですし、「船乗りになりたいけど酔いやすい体質なんだよなぁ、、、」ていう方にとっては気になる点ですよね。

今回は船酔いが心配だけど、船乗りを目指したい!という人のために外航船は揺れるのか、酔いやすいのか、そして対策は可能なのかといった点を解説していきます。

僕の船酔い対策

まず、前提として僕は比較的酔わない体質です。

どれくらいの強さかというと、僕が学生の頃、練習船(確か日本丸だったかな)でスラミング(オモテ(船首)の船底が波で浮き上がり、そして落下した際に船底が海面に叩き付けられる現象)のしぶきがブリッジにかかり続けて前が見えないぐらい荒れた日がありました。

我々実習生の内、約8割がブリッジから去るかその場でゲ〇を吐くかという中でもギリギリ無事だったぐらいです。

ウィングでこんなことになってる実習生多数

あの時はサブワッチ(懐かしいですね)もその他大勢もトイレから帰って来ず、数人の実習生と教官とゲ〇の匂いだけがあの狭いブリッジに残っていましたね。阿鼻叫喚地獄絵図。

そこでの私の対策はただひとつ。酔い止め薬を飲んだら負けという学生特有の無駄な矜持があったため、ただひたすら水平線を見るだけ
この何も作業をせず遠い目をし続けるだけのストロングスタイルで合計一年間の実習船生活をギリギリ吐かずに耐え抜きました。

これだけでも耐え抜けたレベルですので、僕は比較的酔いに強いほうのかもしれず、私の回答の信憑性は怪しいかもしれません。

なので練習船でしょっちゅう酔ってダウンしていた友人の体験談を交えて、以下回答していきたいと思います。

外航船は比較的揺れません

もちろん船種によりますが、外航船であれば結論から言うと練習船よりは揺れません。

理由は以下3つ。

  1. 船が大きいため
  2. そもそも荒れる予報がある海域は避けるため
  3. 揺れないよう対策するため

1.については小さい船よりは大きい船のほうが波風に対して強いのは皆さん想像しやすいでしょう。
2.と3.は同じような内容ですが、そもそも貨物船は貨物や船体へのダメージを避けるために荒天の海域は可能な限り避けるものなんです。

例えば台風やハリケーンが発生したという場合には、まず真っ先に本船に影響はあるのか、もしあるなら航路の変更は可能か、など船が揺れないように対策を講じます。
あと対策としては航路変更以外でできることといえば速力を落とすか、針路を変えるかですね。
基本的には斜め前から波を受けるように針路をキープするのが揺れを抑えるためにはベストです。あとは完全に船を止めてしまうことも稀にあります。

話が少しそれましたが、結論としては貨物船では

・そもそも大きいので揺れづらい

・貨物と船体のために揺れないように対策をとる

ので、揺れづらく乗っている人としても比較的酔わない環境になっていると言えます。

しかし、私も一度だけインド洋でワッチ中に20度のローリング(横揺れ)を経験したことがあります。私とAB(当直のフィリピン人。舵取り。)は左右に歩き回って大はしゃぎ。ブリッジではしゃいでいる間、私の居室では机の上と洗面台のものはほぼ全て吹き飛び、ワンケース分の缶コーラが部屋の中を左右に走り回っていました。

ワッチ後の巡検でチラ見して絶望しました。

ただ、そのような中でも同じ会社に入った練習船で倒れていたあの友人は無事でした。

彼曰く、「ローリング周期がゆっくりなので酔わなかった」とのことです。

揺れる周期が長いので酔いにくい

前提として、大きい船の方が揺れの周期は長く、小さい船の方が周期は短くなります。

海技試験でもこのような問題は出てた気がしますね。式としてはT=2πk/√(GM⋅g)、、でしたっけ、、この記事を書こうと思って今ググりましたがもう全然理解できませんでした。

とにかく体感としてもそうなんです。

要するに外航船は練習船よりも大きいためにゆっくーーり上下左右に揺れるんですね。酔いやすい友人曰く、どうやらこれによって酔いづらく吐きづらいらしいです。

確かに練習船を耐え抜いた私でも、細かく跳ねるように揺れる釣り船で沖に行った時には湾からでた瞬間にゲ〇を吐き、掃除しようと下を向いてまたゲ〇を吐き、無限ループで吐いていた経験があるので同感です。

したがって、小さい内航船などでは話が変わってきます。船種と海域によっては本当にシャレにならんぐらい揺れるらしいです。

僕はTwitterで内航船の方々が「時化ラッチョ(笑)」などといいながら大荒れの海域をシレっと航行している動画を見て震えました。僕でも無理だなという環境をバリバリ走っている船をよく見かけますし本当に尊敬します、、

船酔いには慣れないが、対策が上手くなる

そして、船酔いには慣れるのか?という質問もよく聞きますが、友人曰く「体質を変えるのは無理だけど、酔わないように工夫ができるようになるので結果として慣れる。」とのこと。

私と友人が実践して効果があった対策は以下の通り。

  1. 遠くを見る
  2. 外の空気を吸う
  3. 酔い止めを早めに飲む

自分でヤバい予感がした瞬間にこれらの対策が取れるようになれば、時化にも徐々に強くなっていけると思います。

機関室で仕事をしている機関士は1.と2.の対策が取りづらいですが、ブリッジより機関室の方が横揺れの幅が小さいので基本的には機関士の方が酔いづらいと思います。

(それでも酔う機関士はアネロン飲んで気合で頑張ってください、、)

結論

船乗りでも吐く人は吐く。しかし外航船は揺れづらいし対策も上手くなっていくので夢を諦める程の問題ではない。というのが私と私の友人の見解です。

船酔いだけを理由に諦めず、勉強と就活頑張ってくださいね。

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